大教大、堅守実った国立26季ぶりV――近畿学生野球・春季リーグ
2009/06/05配信

リーグ優勝を決め、朝賀監督を胴上げする大教大ナイン(5月14日、大阪市住之江区の南港中央野球場)
近畿学生野球・春季リーグで大阪教育大が6度目の優勝を果たした。国立大として26季ぶりのリーグ制覇で、投手を中心にした守りの野球が実を結んだ。2度 目の出場となる全日本大学選手権(9日開幕)ではまず1勝、そして日本一が目標。全国大会の晴れ舞台で「国立大の意地をみせたい」と意気込んでいる。
「投手がここまでやってくれるとは思わなかった」。菊永裕樹主将(4年)は軽い驚きを持って振り返る。8勝1敗、勝ち点4の完全優勝の原動力となったの は、岡本慶之(3年)と山本翔(2年)の両右腕。ともに3勝、防御率はそれぞれ0.32、0.60と好成績をマークした。
岡本は度胸が良く、ピンチにも動じない。山本は最速148キロの直球を誇る。タイプは異なるが、マウンドで考えることは同じ。「低めの球で打たせて取り、 野手のリズムをつくるのが大事」。テンポ良く打ち取るからバックは守りやすい。もともと向上していた守備がさらに締まった。
下級生投手を支えたのが、リーグ戦の最優秀選手に選ばれた捕手・斎竹優貴(4年)。この春は5季連続優勝の奈良産業大が不祥事で出場停止となり、第1節で対戦する阪南大がカギとなった。1勝1敗で迎えた第3試合、斎竹のリードがさえをみせた。
3―0とリードした9回裏の守り。2死満塁で最も警戒する打者が打席に。ここで斎竹は山本に3球続けてフォークを要求。「前の試合で縦に落ちる球に合って おらず、この試合も1打席目で修正できていなかったから」。結果は投ゴロ。ここ数年2強の一角にあった阪南大を下し、貴重な勝ち点1をもぎ取った。
一方で打撃にはそれほど期待が持てない。「基本的に打てないチーム」と菊永主将。だから「ヒットが打てなくても点が取れる野球」を目指した。重視したのは 自分のバットで決めるのではなく、次につなぐ意識。朝賀洋史監督は「次に次にと任せていけば、打線になる」と説いた。
試合中の大教大ベンチは明るい。その盛り上がりの中で、朝賀監督は昨年までとの違いを1つ感じていた。「『次につなげろ』という声が飛び交っていた」。つ なぎの打線がいかに機能したかは、打点が誰かに集中するのではなく、各打者にばらけて記録されていることからも分かる。
大教大野球部は週に2日、グラウンドを使えない。照明設備がなく、使える日も全体練習の時間は限られる。会社勤めの朝賀監督は週末しか練習に顔を出せず、 日々の練習メニューは上級生らが自主的に決める。13年ぶりの全日本選手権出場が決まっても、この練習環境に変わりはない。
菊永主将は「リーグ自体もそんなに強くないし、自分たちのレベルが一番下だと思う」。ただ、チームはこの冬から日本一を掲げ、練習でも「日本一になる」と 声に出してやってきた。朝賀監督はさらに上を見据える。「ジャパンのユニホームを着よう」。全国大会で活躍し、その後の日米大学野球の代表に選ばれること をナインに求めた。
(大阪運動担当 唐沢清)
◎全国制覇、関西勢は7回
第58回全日本大学野球選手権は9~14日、神宮球場と東京ドームで行われる。全国26の連盟から春季リーグ覇者が参戦。関西からは大阪教育大のほか近畿 大(関西学生)、龍谷大(関西六大学)、関西国際大(阪神大学)、仏教大(京滋大学)が出場する。
関西勢はこれまで全国制覇7回。近大が2度連覇を果たして計4回優勝。直近では2006年に大阪体育大(阪神大学)が頂点に立った。関西学生の所属チームの活躍が目立ち、1990年以降、延べ10校が4強以上に進んだ。
近大は今回が27度目の出場。春季リーグ戦では関西学院大に連敗後、6連勝して2季ぶり43回目の優勝を決めた。荒木貴裕主将(4年)は「今年は投打にす ごい選手がいるわけでないが、一人ひとりが役割をきっちり果たせるのが強み。全員野球で日本一になりたい」と力を込める。
ちなみに、国立大学は過去に計7勝している。最も勝ち上がったのは、98年の京都教育大で2勝して8強に進出。大教大は前回出場の96年に1勝を挙げている。